「白い花に願いを込めて」

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「んなことよりも。オレ達は、死神の世界ってとこから来たんだが、そこにいるヤツらが、シロアンの歌声に聞き惚れちまってな。なんでも、ただそれだけじゃなく、子守歌のように安らかに気持ちの良い眠りにさせるってウワサを聞いてな」 「そうなのですか…?」 そんなことは全く知らなかった。ただ好きで歌っていただけなのに、他にもあったらしい世界の人達に知らぬ間に聞いていて、ウワサまでされていたとは。 どんな反応をしたら良いのかと思案していると、「そこでだ」と言って、隣にいるクロサキの肩を掴んだ。が、すぐさまはたかれてしまった。 「ってー」とはたかれた手を振って、恨みがましくクロサキの方を見ていたが、当の本人は素知らぬ顔だった。 「オマエはそういうヤツだよな」と文句を垂れつつ、 「コイツ、何か知らねーけどちゃんと寝れてねーみたいなんだ。なんか、悪夢ってやつ。オレは寝なくても平気だし、夢っていうのも見ねーからよく分からないが、とにかく、シロアンの歌を聞かせてやって欲しい。初対面で突然こんなことを言うのもなんだか、頼む!」 頭を下げ、両手を合わせて頼み込まれた。 「…え、えと………」 本当に初対面で突然のことで、頭が混乱していた。本当にただ歌を聞かせるだけでちゃんと寝かせられるのだろうかと。 チラッと、クロサキの顔を見る。 さっきよりかは顔を上げ、そっぽを向いているが、目元が薄く黒くなっており、ヒュウガの顔の色を見る限り、元々白いようだが、それに比べても顔色が悪そうに見え、目が心なしか虚ろそうにしていたのが見えた。 シロアン自身も夢は疎か、寝ること自体したことは無いが、クロサキのことをどうしかしないという気持ちが強くなっていた。 「分かりました。歌えばいいんですよね?」 「マジ!?ありがてぇわ!」 バッと顔を上げたヒュウガの顔はかなり喜んでいた。 長年悩んでいたのかもしれない。自分のことではないのに、さも自分のことのように悩んでいるだなんて、優しい人なんだなとシロアンは密かに思った。 「ってことで、悪いがコイツのこと後は頼むわ」 「えっヒュウガさんは?」 「オレ、死神の仕事があって忙しくてな。また後でな!」 と、そそくさとその場に去ってしまった。 てっきりいるのかと思っていたのに。 シロアンは困り顔で、去っていた方を見、次に突っ立っているままのクロサキを見た。
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