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クロサキはヒュウガの手をはたいた以外、特に反応を見せない。まるで石像のような彼にシロアンは、少々緊張していた。
というのも、相手に一瞬の隙を見せず、拒絶しているかのような雰囲気を纏わせているからだ。
何がどうしてそんなにも相手のことを警戒してるのだろうかと頭の隅で思いつつも、ずっと立っているのもなんだしと思い、座ることを促した。
しかし、すぐには座ろうとはせず、一拍遅れて、しかも少々離れたところに座った。
クロサキの行動に理解が出来ずにいたが、今はそのことは置いておいた。
「ヒュウガさんが言っていた、死神の仕事って何なんですか?」
「…………」
「クロサキさん達が住んでいる世界ってどんな所なんですか?」
「…………」
「き、今日もいい天気ですね。そちらの世界もそうですか?」
「…………」
笑みを含んだ顔に汗が滲む。
こちらの質問にうんともすんとも言わない。さっきもそうだが、喋るのが苦手なのだろうか。
「そんなことよりも、クロサキさんは寝たいのですよね!私、今から歌いますので、寝てください」
深呼吸して、口を開いた瞬間。
何故か、クロサキは立ち上がり、その場から離れようとしたのだ。
シロアンはそれに気づき、驚いた声を上げた。
「えっえっ?クロサキさん?どうされました?」
それでも、歩みを止めそうには無かった。
その時、シロアンは気になることがあった。
クロサキの歩き方が足を引きずっているかのような、おぼつかない足取りをしていたからだ。
そこまで気にするほどでもないが、どこか痛めているのかと思い、「クロサキさん、足どこか痛めたのですか?」と訊いてみた。
すると、ピタリと立ち止まった。
そうして、そのまま動こうとしなくなった。
どうしたのだろうか。
「ク、クロサキさん…?」
呼びかけてみても、もちろん返事は来ない。
困惑していると、もう一度歌ってみようと思い至り、歌い始めた、直後。
崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだ。
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