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橙色に染まり、太陽が沈んでいく夕暮れ時。
その頃にヒュウガが来た。
「こんな時間まで悪かった。なかなか終わらなくてな。で、クロサキのヤツはどうよ?」
「ヒュウガさん!待ってました!見てください!」
姿を見た途端立ち上がったシロアンは、自身の足元を指し示した。
ヒュウガはその先を辿ってみると、クロサキが寝ている姿が入った。
「おおー!静かに寝ていやがる!こんな姿を見るのは初めてだ!ウワサは本当だったんだな!」
喜びで大声を上げていると、うるさかったのか、ゆっくりと目を開け、のっそりと起き上がろうとしていた。
「あ、ヤベ」と慌てて口を塞いたが、後の祭りであった。
クロサキはその場に座った状態になり、眠たそうで半分開ききってない目を開けていた。
「クロサキー?ごめんなー?」
気まずそうに謝罪していたが、気づいていないのか、何も言ってこない。
雰囲気も、寝ていた時と同じく無防備状態であった。
そんな変わりようにどうしてなのだろうと疑問に思っていると、「まだ寝ぼけているのか」とヒュウガがぼやいていた。
「それはどういうことですか?」
「いやぁ、コイツ、寝起きが悪いみたいで、しばらくこんな状態なんだわ。触らずそっとしておいてくれ」
「触らず?」
「ああ。人に触られるのが嫌いみたいなんだ。喋らないからよく分からないが、行動を見てみるとそんな感じだな」
たから、さっきヒュウガの手をはたいていたのか。
納得していると、新たな疑問が湧いた。
喋らないとはどういうことなのだろう。
そのことを訊いてみると、ヒュウガもよく分かってないようだ。
行き倒れだったところを保護したらしく、何故あそこで倒れていたのか、どこから来たのかと訊いても、何も返って来なかったという。
「そうなんですか……」
シロアンはクロサキの方を見やる。
起きてきたのか、段々と目を開いていく。と同時に警戒心が強くなっていくのを感じた。
それに対して多少肩に力が入ってしまってると、「おっ、クロサキ起きたか。そろそろ帰るぞ」とヒュウガが声を掛けている。
「シロアン、邪魔したな」
「あ、いえ………」
その時、クロサキの顔が目に入った。
訪れた時よりかはいくらか良くなってるが、それでもほぼ良くなさそうだ。
このまま、帰らせてもいいのだろうか。
「ヒュウガさん、待ってくださいっ」
「……はっ?」
クロサキを連れ添って帰ろうとしたところを止めた。
「クロサキさん、まだ顔色が良くなさそうですし、ここにいさせてはダメでしょうか?」
「あー………」
眉間に皺を寄せ、考え込んでいた。
と、すぐさま「分かった」と声を上げた。
「この天界の方がいやすいだろうしな。シロアン、わりぃがクロサキのことを頼むわ」
「分かりました!」
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