取り戻そうよ

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取り戻そうよ

 淹れたての心地よい紅茶の香りに惹かれて、白磁のカップに鼻と口を近づけて湯気と香りを楽しんでから、テーブルの先にあるアーチ型の窓から外の景色を見た。 芽吹いたばかりの草の生き生きした姿の中に紛れて、名も知らない小さくて白い花がいくつか地面に咲いているのが見える。 もうすぐ春なのに、まだまだ寒い室内には、黒くて丸いストーブがあって、そのなかに赤い炎を閉じ込めて、私と室内を温めてくれている。 ストーブの上に置かれた赤色のケトルがしゅんしゅんと音を立てて湯気を出しているから、私の喉を乾燥から守ってくれている。 そのストーブから延びる銀色の排煙筒は、天井の梁を横切って外に向かっていて、ぼんやり見ていると、なんだかまるで未来へと伸びているようにも見える。 まだ冷たさをはらんだ風が窓枠のガラスをカタカタと揺らしていた。 窓の向こうに見える木漏れ日の光が、とても柔らかい。 耳を澄ませると、これが、風の音なのかな。 その音を聴きながら、少し考えた。 「ねぇ、どんなのだっただろうね・・。」 そう言って、膝の上のダイナの艶のある黒い頭の毛を撫でた。 ダイナは、右手の肉球をペロっと舐めて、私を見つめた。 ダイナは何にも言わないままだけど、 「リデル、キミは自分からその扉を閉じて、いらないって言ったんでしょ?」 と、その視線が言っているように感じた。
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