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「ダイナ、お買い物に出掛けてくるね。」
そう言って、膝の上のダイナを抱えて立ち上げて、私の座っていた椅子の上に座らせた。
その時にダイナの首すじの匂いをかいでみると、猫らしい匂いがした。
今日は良いお天気だけど、春の始まりのこの季節は、まだまだ寒い。
だから、ライトグリーンのセーターと厚手のスカートとタイツを履き、紺色のダッフルコートとファーのついたブーツを履いて、それから生成りのトートバッグを肩にかけて、手にはコバルトブルーのミトンを嵌めて玄関の扉を空けて外に出た。
空の色は透明感のあるセルリアンブルーで、そこにわたあめみたいなおぼろ雲がかかっていた。
常緑樹のちょっとした林を抜けて、レンガの石畳の上を歩きながら、私はいつものパン屋さんに向かった。
去年の秋に葉を落とした木々には、まだ蕾も芽吹いていないけど、柔らかくなった日差しを感じる。
街並はいつものようにレンガ造りの家が多く、どの屋根も三角屋根で、まるで妖精の家のようにも見える。
きっと、ここにも、あの音楽が溢れていたはずなのに・・
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