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第一章 デイビッド、モレア王国の歴史を語る(3)
僕は、ページをくるために少し間を置いた。
「幸いなことに、当時のアーサー王は、クラウスを凌ぐほどの魔法の使い手でした。王は、クラウスを返り討ちにすると、ジェニーにクラウスの封印を命じました。本来ならクラウスは、命を奪われても文句は言えません。しかし、慈悲深いアーサー王は、命を取ることまではせず、ただ、クラウスを封印するだけにとどめたのです」
「優しいな。そういうところも父上そっくりだ」
「ヘンリー王子」
僕は、教科書を持った手を脇におろした。そして、ため息混じりに首を左右に振った。
「まだ、読んでいる最中ですよ。途中で、言葉を挟まないで下さい」
「ごめん」
王子の長所は、すぐに素直に謝るところだ。僕は、首をすくめている王子のあどけなさに、くすりと笑みをこぼさずにはいられなかった。
「では、続きは王子に読んでもらいましょうか」
「え」
「声を出したくてたまらないご様子ですから。続きをどうぞ」
王子は、教科書を見て少しもじもじしていたが、やがて、小声でぶつぶつと読み始めた。
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