張り巡らされた包囲網

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退院ーーーーー翌日 彩人さんのキスで目覚めた私に 「おはよ、可愛いひより」 上機嫌の彩人さんは朝食の後で家中を案内してくれた 賃貸だと言うこの家は 家主の転勤で出た物件だったらしく期限付き 「マンションより良いんだけど そのうちまた、引っ越すからね」 「・・・?」 行動派の彩人さんのことだから きっともう次のビジョンは頭の中で確立しているはず 「ひよりは僕を信じてついて来れば問題ないよ」 穏やかな表情を見ているだけで 頷いてしまうから不思議 「ひより、身体辛くない?平気?」 充分過ぎるほど甘やかされて ずっと彩人さんの隣にひっついている これまでもそうだったけれど 退院してから輪をかけたのは彩人さんが必ず私のどこかに触れているということ 部屋を移動する時は手を繋いでいるし ソファに座れば肩を抱かれている 食事は膝の上で・・・ まるでひな鳥の餌付けのように 彩人さんが口に運んでくる 「自分で・・・」 恐る恐る出した声は 聞こえなかったのか・・・ 聞きたくなかったのか・・・ 「死んでも離さない」 と公言した通りに トイレ以外ずっと一緒 「ひより、出かけよう」 お昼ご飯を食べてから 彩人さんの運転で出掛けたショッピングモール 平日の昼間なのに混み合った店内 彩人さんは迷いなくジュエリーショップへと入った 「原田様、お待ちしておりました」 神経質そうな男性に案内され個室に通された 煌びやかな店内の落ち着いた個室に少し力が抜ける 深い色のスーツを着こなした女性が運んできたカップが並べられると コーヒーの香りが広がった 「どうぞ」と笑顔を向けられたタイミングで 「ひより、コーヒー大丈夫? 紅茶に変えて貰う?」 彩人さんが声を上げたから 笑顔の女性の頬が引き攣った 「い、え、大丈夫です、コーヒー頂きましょう」 肩を抱かれて反対の手は繋がれたまま 間近の彩人さんを見上げると 「そう?じゃあこのままで良いね」 少しでも動けば唇が触れてしまいそうな距離に 呼吸を止めた
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