一目惚れという運命

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頭の鈍い痛みに重い目蓋を開けた 「・・・っ」 その痛みを一瞬で分からなくする程の衝撃に呼吸を忘れる 見たことのない部屋 そのベッドに寝ている自分 そして・・・ 「・・・っ」 右側に感じる温もりはどうやら人のようで それよりもなによりも 「・・・っ」 何度目かの驚愕の事実に 頭の痛みが蘇ってきた ・・・服を着ていない シーツに身体が触れる感覚があまりにリアルで 恐る恐る手で身体に触れてみた結果に 寝ているのに目眩さえ感じる そんな私の耳に 「起きたのか、おはよう。ミキ」 鼓膜を震わせるようなバリトンが間近で響いた 「ヒャッ、え?・・・あ、の」 何をどう聞いていいのかも分からず ただ視線を合わせるだけで次の言葉が出てこない そんな私に 「ミキは可愛い」 ウッカリすると勘違いしそうな程の色気を振り撒きながら 頭を撫でる原田さんから目が離せない あまりに見つめ過ぎたのか僅かに口元を緩めた原田さんは 「どうしたの?」 撫でていた手を止めた 「・・・・・・あの」 「ん?」 「私は何故ここに・・・」 「え?覚えてないの?」 「・・・ごめん、なさい」 「いや・・・謝らなくていい」 「・・・」 「でも・・・誘ったのはミキだよ?」 「え?」 「店を出てドライブしたのは覚えてる?」 全く記憶にない 「海に着いてお喋りしたんだよ 大学からの一人暮らしのことや 今の会社に新入社員がミキ一人のこと 恋人は高校生で一人、大学生で一人 初体験は大学生の時って」 原田さんの口から出る私の歴史に 他の誰も知り得ないことも含まれていて愕然となる 「恥ずかしながら一目惚れって伝えたら 『付き合いましょう』ってミキから言ってくれたんだけど」 そう言って眉を下げた原田さんに 申し訳ない気持ちが膨らんだ
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