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「んで、この番号な」
ホテルの部屋に着いて
携帯を充電器に繋いでから
彼女に貰ったメモを取り出した
「俺にどうしろと?」
「聞くまでもないだろ?」
「仰せのままに」
SE兼秘書の勝利に出来ないことはない・・・たぶん
自作のパソコンをバッグから取り出し
作業し始めたのを確認して
テーブルの向かい側で仕事用のパソコンを開いた
ルームサービスが届けられたタイミングで携帯が唸り始める
そこを勝利に任せて寝室へと移動する
登録の無い番号に少し迷ったものの
耳に当てると
「こちら○○警察ですが・・・」
財布が見つかったとの連絡だった
日本は捨てたもんじゃないと思ったところでリビングへ戻れば
「こっちも完了」
さっきまでパソコン二台しかなかったテーブルに料理が並んでいて
既にワイングラスを手に持った勝利がエアで乾杯をして見せた
「そうか」
それに引き寄せられるように向かいに座ると
向けられた画面にはあの子が写っていた
「ん?」
「なに?」
「苗字だったのか」
呟いた声を拾った勝利は
「あ〜、名前みたいな苗字ね」
『ミキです』
あの時どうして名前だと思ったんだろう
社会人なら苗字を名乗るのが通り
音の響きがよくて勝手に『ミキちゃん』だと解釈した
これもまた彼女とのお喋りの種になる
そう考えて敢えて勘違いしたままにしようと思った
『三木ひより』
画面に表示された名前に
彼女の雰囲気にピッタリだと口元が緩む
「おいおい、だらし無い顔してんな」
「そうか?」
「あぁ、初めて見る顔だぜ」
既に一本目を空にする勢いで飲んでいる勝利は戯けたように両手をあげた
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