一目惚れという運命

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「・・・あのっ」 「「・・・?」」 「幾らですか?」 「・・・は?」 突然話しかけてきた私に驚いた二人だったけれど 「タクシー代、立て替えます 幾ら払えば良いですか?」 「・・・え」 「一万五千二百円」 運転手さんは外からメーターを指差した 「(高っ)」 どんな距離を走ってきたのかチラリとお客を見たけれど 声をかけた以上 途中放棄は出来ない それに・・・ 昨日お給料日だったから 財布の中は潤っている 「はい」 財布からピッタリ取り出すと 運転手さんの手袋の手に乗せた 「領収書、お願いします」 「あ、はい」 運転手さんから領収書を受け取って財布に入れると 「ありがとうございました」 アッサリと運転手さんはタクシーに乗り込んで行ってしまった お客である彼は我に返ったように 私に視線を戻すと深々と頭を下げた 「ありがとうございました なんてお礼を言ったらいいか 本当にありがとうございました タクシー代は必ずお返しします あ、携帯番号教えますね、それと」 スーツの上着の内ポケットから名刺入れを取り出した そこから一枚抜き取ると小さく頭を下げた 「原田彩人(はらだあやと)です 君は・・・」 「三木です」 「ミキさん。ありがとう ミキさんの携帯番号を教えて貰えるかな?」 「あ、はい」 バッグの中からメモを取り出して 携帯番号を書いて渡す 「僕の携帯充電がなくて、あの 明日!明日必ず電話します」 何度も頭を下げる原田さんに 「困った時はお互い様です」なんて 大人ぶった言葉を残して さっきより幾分少なくなった人波に紛れた
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