張り巡らされた包囲網

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「ただいま」 「フフ、ただいま。 なんだろうね、今日から住むのに ひよりが居るだけで落ち着くよ」 約1ヶ月・・・ 正確に言えば三週間と四日 彩人さんに出会って たったそれだけで ・・・入籍? 駆け足で進むような感覚に 少し不安になるけれど 彩人さんと一緒にいると安心できて 自然と笑顔になっている 窮地の時は救ってくれて 王子様みたいだし なにより 十一歳の歳の差は 少々の揺れにはびくともしない安定感がある 「ひより?」 「ん?」 「考えごと?」 「ううん」 「退院したばかりなのに、僕が無理をさせたからだね もうこれ以上面倒なことは起こらないからね 今夜はゆっくり寝て、また明日色々教えよう」 「・・・はい」 彩人さんに促されるまま お風呂に入ったあとは まだよく知らない二階へと連れられて 大きなベッドが鎮座する寝室へ入った 「何も考えずにゆっくり寝るんだよ」 そう言って抱きしめられた彩人さんの体温の高さに 眠りの中へと落ちていった ・・・ 知らない間に退職届が出されて アパートが解約されていて 婚姻届が用意されているなんて 心地良い腕の中で眠った私は まだ知らない
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