一目惚れという運命

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「到着」 駐車場で止まった車 シートベルトを外してバッグを手に持ったところで助手席のドアが開いた 「さぁ、どうぞ」 自然に出される手を掴んで良いものか考えるより先に 原田さんの手に捕らわれていて 「此処ね、美味しいんだ」 そう言って笑う原田さんにエスコートされるがまま 気がつけば全身に力の入るような格式高いお座敷に入っていた 「好き嫌いってある?」 「・・・あ、りません」 「じゃあ、お任せにするね」 ニコニコと嬉しそうな原田さんと 対照的にどんどん固くなる私 「どうした?気分でも悪い?」 「あ、いえ、あの・・・ 雰囲気に飲み込まれているだけです」 「ハハハ、そうか、緊張してるのか 大丈夫だよ?見かけだけだからね 中身は普通の和食屋さん」 原田さんはなんでもないことのように言うけれど 普通の和食屋さんなんかではないことくらい 一般人の私にも分かる けれど・・・ 私へのお礼の為に此処を予約してくれた原田さんの気持ちを無下にしない為に 出来るだけ笑顔でいようと決めた 「おまかせ」と女将に告げた原田さんは 料理が運ばれてくるまでの間に 白い封筒に入ったタクシー代を返してくれた 「ミキさんが声をかけてくれなければ 僕はあと少しで警察に突き出されていたかもしれない」 原田さんはそう言って眉を下げた でも・・・ 私じゃなくても誰かには助けて貰っていそうな雰囲気を原田さんは持っている だから・・・ 「お給料が入ったばかりで 気持ちが大きくなっていたのかもしれません だから・・・お気になさらずに」 正直に答えたけれど 「お給料日前でもミキさんは 貸してくれそうな気がするよ? つくづく、ミキさんに見つけて貰えて良かった」 敵いそうもない原田さんのプラス思考に負けた
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