一目惚れという運命

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「お酒は飲める?」 「弱くて、全然だめなんです」 「そうか、じゃあ食前酒だけ飲んでみて?ここのは美味しいから あとはお茶にしよう」 原田さんは運転するからと 最初からお茶を頼んでいた だから、私の前にだけ グラデーションが綺麗な食前酒グラスがあった 「じゃあ、これだけ」 ひと口だけでも酔い潰れるかもしれないのに 雰囲気に飲まれてしまったのか 笑顔で頷いた私 原田さんとの時間はとても楽しくて 聞き上手の話し上手に乗せられて 目にも鮮やかな懐石料理にも 原田さんの喋りにも酔ってしまった それは・・・きっと気づかないうちに 彼自身に惹かれ始めていたからなのかもしれない 「ミキさん?」 「・・・はい」 「平気?」 「はい」 デザートの果物が運ばれて 再び二人きりになるころには 最初のような緊張感は消えていて フワフワしたような心地よい気分 「ミキさん?」 「・・・は、い?」 「嫌じゃなければ、また食事に誘っても良いかな?」 「あ・・・はい」 「良かった、断られたらどうしようかと思っていた」 ホッとした表情を見せる原田さんの顔が 何度も落ちる目蓋で見え隠れする 「ミキさん?」 「ミキ、ちゃん?」 「・・・ミキ?」 原田さんの呼び方がいつ変わったのか 混濁する意識がいつ途切れたのか 抱き上げられた浮遊感にも気付かず 「捕まえた」 猟奇的な腕の中に落ちていた
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