118人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 負け犬。
イルミネーションが水辺に反射して、そこは宝石を散りばめたようになっている。眩しいほどの光はただ白いという色で片づけるにはもったいなく、透き通るような美しさをもって輝きを放っていた。
「いつか読んだ話にもあったよなぁ…。ああ、あれだ。キツネが手袋を買いに行った描写の中にあったわ。“コバルト色”って書いてあった」
オレの名前は大江啓介。自分で自分を紹介することすら苦手。それなのにプライドだけはやけに高くて、アンバランスさを感じている。
「やっぱ……死ぬしかないか。でもこの川、この時期に入ったら確実に寒いだろうな、当たり前だけど?」
オレは今、途方もなく切羽詰まった状態にある。自分の生活費を稼ぐのがやっとだという日々にも拘わらず、友人になけなしの金を貸したのだが、もともと金のないヤツに貸したらちゃんと返ってくるわけがなく、約束の期限を境にスマホは通じなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!