第一章  負け犬。

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「これで何回目かなぁ…。でも、貸した金でアイツが救われているんならそれで良しとするか」  いやいや、全然良しという方向性ではない。なんでもヨシ!ヨシ!言えるのは現場猫ぐらいだろうよ。  世間は年末に向けて街中がキラキラとしている。12月のこの時期がコドモの頃から本当に好きだった。思春期ギリギリまでサンタクロースの存在を信じていた。たとえ両親が枕元にト〇ざらスで買ったおもちゃの包みを置いてくれていたとしても。 「電気は止まったし、水道が止まるのも時間の問題だからなー。家賃も滞納してるし、万事休すだな、はははーん」  つとめて明るく振舞っていてもそれは痛々しくてみじめだ。時間はすでに日付が変わろうとしていた。この川っぷちは9時を境に人通りがぱったりとなくなった。死ぬには最適のチャンスなんだろうな。
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