第一章  負け犬。

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 橋のフェンスにつま先を掛け、それを跨いで飛び越えた。あとは川面に飛び込むだけ。ああ、光が揺れてすげー綺麗じゃないか。バカで間抜けかもしれないけれど、人を信じることは愚行だとは思いたくなかったんだよ。  オレは目を閉じ、思いっきり蹴った。身体は簡単にフェンスから離れて大きな水音を立てて沈んでいく。  良かった…楽になれる。このまま水死体じゃなく、人魚姫みたいに泡になったら超理想的なんだが、現実はそうはいかないだろうな。出来れば、人様に迷惑をかけず、水死体も見つかりませんように。そんなふうに意識を失っていった。 **************  ここは天国なんだろうか?瞼を閉じているのにその向こうには温かい光が溢れているように感じた。良かった。オレは無事に死ねたんだ。無事っていうのも変だけど、これで苦しみから解放されたんだろうな。そんなふうに思っていたのだが…。
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