第一章  負け犬。

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「どうして……どうしてオレを助けたんです?」  オレは死ぬことさえ失敗した。それは何をやってもダメだという決定打を出されたような気がした。オレは抗議のつもりでその言葉を言い放ったあと、情けなくて泣いてしまった。声に出して泣きたいくらいだったが呆れるくらいに静かに涙を流した。  すると目の前の不機嫌そうな男は大きなため息をついた。 「……お前は救いようのない負け犬だな。いいか?ひとつ教えておいてやる。どんなに金を持っていても、金は贅沢は出来たりしても人間の命は買えない。寿命は与えられたものだがそれぞれ違う。その金で買えないものをオレは拾ってやったというのにどうして助けたのか?と聞くのか?」  それは真っ当な事実だ。そんなの小学校の道徳でさんざん習ってきたことじゃないか?でも現実はそれを凌駕するほどシビアだと解らないのか、このひとは。
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