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『いやいや、まぁね、聞くよね?そういう話は。感情移入しすぎてとか、実際、共演がきっかけで結婚されてる方もいらっしゃるしね』
完太くんがじーっと佐田周を見つめる。
その唇が震えてる。
笑ってる?
これは何か知ってる顔だ。
佐田周は「あー、そうね」と、気づかないフリして天を仰ぐ。
『あるということでいいですか?』
重低音の完太くんのダメ押しに、
『頂いた役は大切にしてます。そして誰よりも愛してますね、はい』
手に汗握る攻防は「勘弁して」と、白旗を上げた佐田周の負け。
耳どころか首まで真っ赤だ。
『これは大変だ!ネットがざわついてますよ。過去作の共演者検索されてますよ。今は便利ですよね。“佐田周、ドラマ、映画”と入力して検索したら一発です』
ご丁寧に“佐田周・ドラマ・映画・共演者 検索”とカタカタとキーボードを叩く音付きでテロップが乗る。
『だから違うって!そうじゃなくて、ほら、今、新作キャラが入ってるからね。別の作品の時に、そうだな、人を殺しまくってるような役の時にまた聞いてください』
『だそうでーす。て、周さん、次は何役なんですか!?そんなドギマギしてる好青年な周さんが逆に気になりますけど?』
『完太、あとで覚えてろよっ!!』
佐田周のドスの効いた捨て台詞が逆に安っぽい。
完太くんも悪びれる様子もなく、むしろ一番楽しんでるんじゃないかってぐらい声を出して笑っている。
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