【 第一話: タイムカプセル 】

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【 第一話: タイムカプセル 】

『ザクッ! ザクッ! ザクッ!……』 「おい、まだかぁ~。『駿(しゅん)』よ~」 「確か、この辺りじゃなかったかなぁ~?」 『ザクッ! ザクッ! ザクッ!……、ガコンッ!』 「おっ! 何か当たった感触があった!」 「よし! 駿、そこ掘り起こそうぜ!」  ボクたちは、小学校を卒業する時に、小学校の裏庭に『』を埋めた。  今日、ボクたちが20歳になった年に、8年ぶりにそのタイムカプセルを開けることにしていた。  当時、六年生の学級委員長を務めていた、『駿』くんが代表で、そのタイムカプセルを掘り起こしていたんだ。 「おおーっ! 何か古そうな()びた箱が出てきたぞ」 「あれーっ? こんな小さかったっけぇ?」 「ばぁか! 俺たちがデカくなったんだよ。それだけ」  ボクは、このタイムカプセルに何を入れたのか、全く憶えていない。  でも、そのタイムカプセルを開ける瞬間は、さすがにドキドキする。 「さぁ~、空けるぞ~。皆の衆、心の準備はよろしいかぁ~?」 「もったいぶらずに、早く空けようぜぇ~」 「分ってるよ。じゃあ、空けるぞ~。オープン!!」  男子たちは、「おお~」っと、どよめいた。  そして、クラスのみんなはそれぞれのタイムカプセルの中身を懐かしんだ。 「ねぇ、『若葉(わかば)』くんは、何入れたの?」 「えっ? ボクは、何か小さな押し花と、手紙が入ってた……」 「ああ、先生がみんなに書けって言ってたやつだよね? 確か」 「うん、多分そう……」  ボクは、男だけど、いつも話しをするのは、女の子ばかりだ。  女の子との話の方が、何故か合っているし、落ち着くんだ。  タイムカプセルの中身に、小学校六年生の時、こんなものを入れていたんだと思った。  その当時は、この押し花がすごく大切なものだったんだろう。  ボクは、その押し花の(くき)の部分を持ち、教室の上の方へ向けて、クルクルと回す様に、その小さな押し花を眺めていた。
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