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【 第三話: 四葉のクローバー 】
ボクは、駿くんと同じ中学へ行き、高校も頑張って駿くんと同じ高校へ入った。
でも、駿くんとクラスが一緒になることは、結局、一度もなかった。
だから、一方的にボクが駿くんに憧れて、駿くんを追いかけていただけだったんだ。
大学も当然、駿くんと同じ国立の医学部を目指したが、ボクは、この2年合格することが出来ないでいた。
だから、神頼みをするのは、これで3回目……。
「若葉くん、医学部まだ目指すの?」
「う、うん……、実は、どうしようか今、悩んでる……」
「別に医学の道だけが大学じゃないよ」
「そ、そうだね……」
ボクは、実は、このタイムカプセルを開ける機会で、全てリセットするつもりもあった。
もう、医学部を断念しようと……。
駿くんの変わらない笑顔を見ていたら、ボクはいつの間にか、目に涙が溜まり、彼の姿が遠く滲んでいくようだった……。
夜になり、駿くんが用意してくれた近くの居酒屋へ、昔の友達と一緒に飲みに行った。
宴会中も、男子は駿くんたちと相変わらず、仲良さそうにはしゃいでいた。
ボクは、そんな彼らがとても眩しく見えて、すごく羨ましく思えた。
――そして、宴会も終わり、みんなと別れ、ボクが一人家路につこうと歩いていた時、何故か彼が後ろからボクにこう声をかけてきたの。
「若葉! ちょっといいかな……」
「えっ? 駿くん……、何……?」
「あ~、今日さ、若葉が教室で見てた『四葉のクローバー』の押し花ってさ……、確かあの頃、珍しいからって、俺が見つけて若葉にあげたやつだよね……」
「あっ、うん、そうだよ……。駿くん、憶えてくれてたんだ……」
そう、小学校六年生の卒業式が近付いていた頃に、駿くんがボクにくれた『四葉のクローバー』……。
学校の裏山にあるクローバーの丘で、駿くんが一生懸命に探してくれて、ボクにくれたもの。
その時、駿くんが、四葉のクローバーって、『幸福』が訪れるんだよって言ってた……。
あの頃は気付かなかったけど、大人になった今なら、その『四葉のクローバー』の意味が分かる。
花言葉は、
『私を想って』……。
あの時のボクは、その本当の意味に気付かなかったんだ……。
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