31人が本棚に入れています
本棚に追加
【 最終話: 夢を追いかけて 】
駿くんがくれた『四葉のクローバー』。
ボクは、それを押し花にして、あのタイムカプセルに入れて埋めたんだ。
あの頃の想いと一緒に……。
「駿くん、よく憶えていたね……」
「あ、ああ、若葉が大事そうにさ、押し花にしてるの、俺見てたからさ……」
「見ててくれたんだ……。ありがとう、駿くん……」
ボクは嬉しかった。
思わず恥ずかしくなって、駿くんから目を逸らして下を見る。
すると、駿くんは、夜空を見上げ、ボクにこう言ったんだ……。
「俺、勇気がなくてさ……」
「えっ? 何の……?」
「今日、タイムカプセル開けて、今ならちょっとは勇気が出てきた……」
「駿くん……」
「若葉、俺と同じ大学目指してるんだろ?」
「あっ、うん……」
「俺にさ、そのお手伝い、出来ないかな……?」
「えっ? どういうこと……?」
「若葉の夢、俺と一緒に叶えたいんだ……。若葉のこと俺、ずっと小さい頃から好きだったから……」
「駿くん……」
ボクは、瞼の奥から溢れ出てくる涙を止めることが出来なかった。
両手で顔を塞ぎ、心が震えるように、声を出して泣いてしまったんだ。
「医学部は6年あるから、いつまでも待ってるよ」
「ありがとう……。駿くん……」
――今日開いたタイムカプセルは、8年の時を越えて、ボクたち二人を結びつけてくれた。
彼との初恋に、まだヨチヨチ歩きのボクだけど……、
ここから、またボクの新たな挑戦がスタートする。
でも、今度は一人じゃない。
駿くんと二人の夢として……。
神様、願いを叶えてくれて、ありがとう……。
もう少しだけ、ボク頑張ってみるね……。
ボクは、久しぶりに見るこの綺麗な星空を見上げ、小さな声でそう呟きながら、彼に寄り添い、笑顔で涙した……。
END
最初のコメントを投稿しよう!