【 最終話: 夢を追いかけて 】

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【 最終話: 夢を追いかけて 】

 駿くんがくれた『四葉のクローバー』。  ボクは、それを押し花にして、あのタイムカプセルに入れて埋めたんだ。  あの頃の想いと一緒に……。 「駿くん、よく憶えていたね……」 「あ、ああ、若葉が大事そうにさ、押し花にしてるの、俺見てたからさ……」 「見ててくれたんだ……。ありがとう、駿くん……」  ボクは嬉しかった。  思わず恥ずかしくなって、駿くんから目を()らして下を見る。  すると、駿くんは、夜空を見上げ、ボクにこう言ったんだ……。 「俺、勇気がなくてさ……」 「えっ? 何の……?」 「今日、タイムカプセル開けて、今ならちょっとは勇気が出てきた……」 「駿くん……」 「若葉、俺と同じ大学目指してるんだろ?」 「あっ、うん……」 「俺にさ、そのお手伝い、出来ないかな……?」 「えっ? どういうこと……?」 「若葉の夢、俺と一緒に叶えたいんだ……。若葉のこと俺、ずっと小さい頃から好きだったから……」 「駿くん……」  ボクは、(まぶた)の奥から溢れ出てくる涙を止めることが出来なかった。  両手で顔を塞ぎ、心が震えるように、声を出して泣いてしまったんだ。 「医学部は6年あるから、いつまでも待ってるよ」 「ありがとう……。駿くん……」  ――今日開いたタイムカプセルは、8年の時を越えて、ボクたち二人を結びつけてくれた。  彼との初恋に、まだヨチヨチ歩きのボクだけど……、  ここから、またボクの新たな挑戦がスタートする。  でも、今度は一人じゃない。  駿くんと二人の夢として……。  神様、願いを叶えてくれて、ありがとう……。  もう少しだけ、ボク頑張ってみるね……。  ボクは、久しぶりに見るこの綺麗な星空を見上げ、小さな声でそう呟きながら、彼に寄り添い、笑顔で涙した……。 END
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