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……何でだろう。たまにしか顔を合わせないのに、最近、ヤツの言いたいことがわかるようになってきた。すげームカつく。九条は九条で、途端に不貞腐れるし。俺だってコミュ障野郎と無言の会話なんか成立させたくないし、むしろできなかったころに戻りたいくらいだ。あ~もうっ、理・不・尽!
とにかく、今は隣の席で二酸化炭素の生成に勤しんでいる友人を何とかしたい。俺の周りだけ酸素が薄くなりそうで嫌だ。
「九条、広瀬さんと何かあったのか?」
はっきり言って、こいつが自分の気持ちをコントロールできなくなるのは広瀬さんがらみのことしか考えられない。嫌なことがあったり、体調が悪かったりしても、九条はいまだにほとんど気づかせない。その代わり、恋人である無表情なコミュ障イケメン野郎のことになると、逆にこっちが心配になるほど感情がだだ漏れだ。といっても、今までは浮かれたり浮かれたり浮かれたりすることが多かったんだが。
盛大にため息をまき散らしながらも、きっちりと黒板をノートに写していた九条は、俺の小声に気づくと、何とも言えない眼差しをちらりと投げてよこした。
「……何にも、ないよ」
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