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いやいやいや、台詞と顔があってねーんだよ! 何にもないってんなら、そんな投げやりな泣きそうな虚ろな顔でこっちを見んじゃねーっ!
とはいえ、今は大学で講義を受けている最中だ。うん、教授、マジでごめんな。すぐ終わらせる。俺は小さく舌打ちすると、言った。
「後で話聞いてやるから、ため息やめろ。俺が酸欠になるだろーがっ」
九条は瞬きを一つすると、やっと僅かに微笑んだ。
「わかった」
まったく世話の焼ける奴だ。
こうして俺は、またしても九条と楽しいランチタイムを過ごすことになったのだった……。
*
「……で、何があったんだ?」
何度目だ、俺がこいつに向かってこの台詞を言うのは。だが今は一月の末だ。さすがに今回は中庭のベンチでは寒いので、次の講義がある教室の隅を早々と陣取ることにした。暖房も入ってるし、今のところ他に人もいない。
鞄から弁当箱を取り出していた九条は、さっきと同じ投げやりで泣きそうで虚ろな眼差しを俺に向けると、さっきと同じ台詞をため息とともに繰り返した。
「──だから……何にも、ないよ」
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