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チャプター1/ミキの純情と打算、そして執念
ミキの純情と打算、そして執念…/その1
ミキ
「奈々子…、あなたにはホント、急な話でゴメン…。即答は求めないから、とにかく検討して欲しいの…」
「ミキ…」
こんな盟友の困惑した顔、見たことない
見たくもなかった
正直…
でも、それでもだったんだ
私…
あれは…、もう半年以上前になるのね…
...
「高本さーん!」
「ああ、ミキさん…」
展望公園で二人はちょっと汗ばんでいたが、心地よい南風を受けながらベンチに並んで座ってね…
思えば、こんな心ときめく異性とのひと時って…、二十歳を過ぎたこの年まで経験したことなんてなかったのよね
...
なんだか、今まで何やってたんだろうって…
南部さんへのときめきとかも…
そんなとても大切な気持ち、自分自身が鈍感に捉えていたという自覚を悟った時の自己嫌悪…
肝心なものを見逃してきた間抜けな自分と、ピントのずれた全力疾走…
もう、自分の何もかもがいやでいやで、丸ごと否定したかった
...
でも、日本を離れる前の紅子さんの予見通りになった
私の目の前に現れたもう一人の男性…
高本健一…
この人だったんだ‼
今度こそは自分の気持ちを見逃さないし、大切にする…
そう胸に誓ったわ
でも…
その先に進んで行くには、やはり踏み絵を避けられなかった
まずは私が紅子さんの後を任された紅組だった…
...
「…じゃあ、ロス行は言葉の問題をクリアすれば採用なのね、高本さん?」
「ああ、そう言う解釈でいいと言われた。でもさ…、漠然と言葉をクリアと言ってもね…。一晩で英語を話せるようなマジックなんてある訳ないし。具体的にどうすればってことがね…」
「早めにロスへ飛んで、紅子さんに英会話の特訓を受ける。これでクリアにならない?」
「…自信がないんだ。要はオレなんかが紅丸さんからマンツーマンで英語を教わったところで、それで実践の会話ができるようになるのかって…」
「まずは採用側を納得させればいいのよ!あとは努力あるのみ。私も全面協力するから…」
「ミキさんはいざとなると強いな。…例の火の玉川原を思い出すよ。正直言うと、細身のアンタがこっちの屈強な男をねじ伏せるなんて信じられなかった…」
「南部さんもそう言ってたわ。でも、私、気持ちは決して強くない。最近、自分自身を見つめる機会が多くて、つくづくそう思い知らされるの。いざとなった時のそれって、一時的な瞬発力なのよ。その時だけで…。それだけなのよ、私なんか所詮…」
「そんなこと、あるかい‼」
高本さん、強い口調で私の言葉をさえぎるかのようにそう言ったわ
この時の高本さんの表情…
激しかった
これが火炎瓶男の素顔なのか…
そう思ったわ
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