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【6】
どこに行こうかとふらふら彷徨っていると、琴平さんが追いかけてきた。
「シロ。すぐに戻るんだ」
「え、でも……」
「急げ。谷さんが、事故に遭った」
驚いて固まるシロの手を掴んで、琴平さんは風のように空を飛んだ。
考え事をしながらなんとなく散歩に出た谷さんは、たまたま道に迷ってよそ見運転をしていたクルマにぶつかった。間が悪かったのだ。
運ばれた病院に着くと、ユミが泣いていた。
真っ青になるシロに「安心しろ」と琴平さんは言った。
「スピードが遅かったから、たいした怪我はしていない。腰の打撲と、転んだ拍子についた右手の捻挫くらいだ。年の割に骨がしっかりしていると医者が言っていた」
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