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念のため一日入院してから帰るらしく、谷さんは病室にいた。
「おばあちゃんのバカ」
ユミは泣いていた。谷さんが何気なく言った言葉に怒っているのだった。
病室には浜田さんもいて、「保険を解約していなくてよかった」と言った。その時、谷さんがぽつりと零したのだ。
「どうせなら、死んでしまったほうが、たくさんお金が下りたねぇ」
笑いながら言った言葉に、ユミは真っ赤になって怒った。
「お金なんか、いらない! おばあちゃんがいなくなったら、私……、私は……っ」
うわあと泣いたユミの髪に包帯を巻いた右手を伸ばして、「ごめんね」と言った谷さんの目にも涙が光っていた。
「ごめんね、ユミ。おばあちゃん、ユミに何もしてやれなくて……」
「全部してもらったよ。私を育ててくれたのは、おばあちゃんだよ」
「だけど、大学に行くお金もないんだよ」
「本気で行く気なら、奨学金だってあるし、アルバイトもする。私、もう大きいんだよ。夢は自分の手で叶えるよ」
トモちゃんの両親や担任の先生がいろいろ調べて教えてくれたとユミは言った。
「私、頑張る。頑張ってお医者さんになる。だから、元気でそばにいて」
ぎゅっと抱き着いたユミを左手で抱き返し、谷さんはただ「うん、うん」と真っ赤な目で頷いていた。
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