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「琴平さん、あれ……」  目を見合わせてから、再び御札を見た。  御札は空っぽだった。  神様が憑いていない。 「どういうことですか?」 「最近、あるんだよ。昔みたいに歩いて旅するわけじゃないから……」  遠い場所から移動する際に、途中で神様がはぐれてしまうことがある。何かに気を取られてちょっと見物している間に、人と御札が先に行ってしまうのだ。それでも昔は追いつけた。だが、現代の飛行機や新幹線はあっという間に遠くに行ってしまう。そうなるともう戻れない。 「遠距離を移動する際には特に気を付けるようにって、呼び掛けられてるはずなのに」 「じゃあ、もう……」 「あれに憑いてたやつは、諦めるしかない。シロはまだここにいるようかな」 「でも、それじゃ……」  今までと同じだ。それでは、ダメなのだ。  呆然と御札を見ていたシロは、ふとあることに気づいた。 「琴平さん、相談したいことがあります」
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