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 讃岐うどんとともに届いた御札は、香川の金比羅様のものだった。 『琴平さんは、金比羅様の系統の神様ですよね』 『そうだよ』 『じゃあ、あの御札に憑いてください』  突然のシロの願いに、琴平さんは最初こそ抵抗したが、今のままではあっという間にデブ神様になると言うと、急に思案顔になった。金丸さんはどうするのだと聞いてくる段階で心はすでに動いていたようだ。あれだけ順調なら当分大丈夫かなと自分から言い始め、年初めには新しい神様が来るんだしと言い、いくらも悩まないうちに『いいよ』と頷いた。  軽……、柔軟だ(金丸さん、ごめんなさい)。  大変だったのはその後だ。野良はおろか、市井においての御札間(おふだかん)の引越しも経験がない琴平さんは、神社での祈祷がなければ引っ越しなどできないと言い張った。  シロが無理やり蹴り出したものの、元の御札に戻ろうとジタバタする。  一度出たのだからどっちの御札に憑くのも同じだと諭しても、泣きながら鯉のぼりにしがみつく始末だ。世話が焼ける。  それでも、憑いてしまえば見目のいい立派な神様で、そこにいるだけで金運が満ちてくるのがわかった。
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