86人が本棚に入れています
本棚に追加
【8】
五月連休の真ん中、ユミのアルバイトが休みの日に、シロは湯島の天神様に連れだされた。
「古い御札を納めて、新しいのをもらいましょう」
「この御札、『家内安全』て書いてあるけど」
「たぶん、大丈夫よ」
ちょっと心配だったけれど、古い御札からゆっくり離れたシロは無事に新しい御札に憑いた。新しい御札はとても居心地がよかった。
家に帰ると「シロは学問の神様だったのか」と琴平さんは驚いた。
「ユミはお医者さんになるらしいから、シロも頑張らないとだな」
「お父さんやお母さんみたいな病気の人を助けたいんだって」
「そうか」
頑張ろう。
シロは神様だ。
人を愛し、守り、その願いを叶えるためにいる。
「頑張ろう」
金丸さんの家の巨大な鯉のぼりが、五月の空をゆうゆうと泳いでいた。
了
最初のコメントを投稿しよう!