【8】

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【8】

 五月連休の真ん中、ユミのアルバイトが休みの日に、シロは湯島の天神様に連れだされた。 「古い御札を納めて、新しいのをもらいましょう」 「この御札、『家内安全』て書いてあるけど」 「たぶん、大丈夫よ」  ちょっと心配だったけれど、古い御札からゆっくり離れたシロは無事に新しい御札に憑いた。新しい御札はとても居心地がよかった。  家に帰ると「シロは学問の神様だったのか」と琴平さんは驚いた。 「ユミはお医者さんになるらしいから、シロも頑張らないとだな」 「お父さんやお母さんみたいな病気の人を助けたいんだって」 「そうか」  頑張ろう。  シロは神様だ。  人を愛し、守り、その願いを叶えるためにいる。 「頑張ろう」  金丸さんの家の巨大な鯉のぼりが、五月の空をゆうゆうと泳いでいた。                             了
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