餞別を君に

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 「子供の見た世界が真実」とはよく言ったものである。親である者は、よくよくこの言葉を反芻し、一時たりとも忘れない心づもりでいてくれたまえ。君の高さでは何も見えないかもしれないが、我々の高さではそこかしこに転がった問題と毎日暮らしているのだから。  何も過去の行いを咎めたい訳じゃあない。思い直してほしいわけでもない。だって君はもう子育てしないだろう。どちらにせよ無意味なことだ。伝えたかったのは、君との過去があったから、今日(こんにち)の私が在るというだけのことだ。  産み育てるのは容易でなかっただろう。モラトリアムが長引いて、普通より余計世話をかけた。しかしそれも今日で終了する。彼の存在を知ったときから決めていた。同じ方法で君の前から姿を消そう。余生は存分に、自分のために生きてくれ。  子供を生きる意味にしないで、どうか寿命の尽きるまで。
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