翔んだクリスマスプレゼント

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 僕ははっきり言ってブ男だ。おまけに勉強も運動も出来ない。特技も特にないし、勿論、人気もない。となると、皆、損得勘定で友達付き合いするから、こんなのと付き合っても何の得にもならないと判断して誰も僕に寄ってこない。寄って来るとすれば、男子が僕を苛める時だけだ。だから友達がいないし、当然、彼女もいない。そればかりか女子の誰もが僕のことなんか見向きもしない。ところが、僕のクラスに入って来た転校生の女子が偶然、僕の前席に着くことになったんだけど、転校した初日から僕に興味を持ったらしく話しかけて来るのだ。名を美奈代と言って、とっても可愛いんだけど、到頭、先日、「あたし、木下君のこと好きよ」と告白して来た。  僕は何で僕のことなんか、而もこんなカワイ子ちゃんが好きになるんだろうと不思議でならなかったし、俄かには信じがたかったから、半信半疑ながら嬉しくなるも、どぎまぎしながら、な、何で、す、す、好きになったの?とむっちゃどもりながら訊くと、彼女は至極当然のように中身よ、中身が好きだからとさらりと答えた。  付き合ってもいないのに中身って一体、どういうこと?中身を見抜く慧眼でも持ってるんだろうか、そもそも僕の中身って良いもんなんだろうかと僕は不思議になるばかりだったけど、でも、やっぱり嬉しいに違いないから夢のような現実を彼女と享受することになり、このたび待望の初デートと相成った。  で、僕らの為に用意してくれたように朝からいい天気だったんだけど、デートする前、僕は元々野暮だし要領を得ない男子だから犬みたいに立ちしょんしたんだ。それがいけなかったんだな。切れが悪くてしょんべがパンツにちょっと付いちゃって幸先悪いなと思ったんだけど、待ち合わせ場所で美奈代と落ち合ったら何か好い匂いするって言うから何の匂いだか分からない儘、僕も嬉しくなって開園から正午前まで動物園で美奈代と戯れちゃったよ。カワイ子ちゃんと手を繋ぐだけでもこの世知辛い世の中が楽園に思えるのにだぜ。動物園で戯れるなんてさ。二人とも動物好きだから行くことにしたんだけど、その楽しさたるや何て言っていいか分からないよ。但、ヨックンってコウテイペンギンみたいって美奈代に言われたのは、あのずんぐりしたなりで突っ立って遠くを眺めたり俯いたりする仕草が哲学者的で確かに僕とダブるかなと嬉しく思ったのははっきり記すことが出来るけど。  で、正午にロッテリアで美奈代と食事できたのも嬉しかったんだけど、正午過ぎから夕方までは僕んちで彼女と二人きりで過ごすことになったんだ。と言うのはこの日は日曜日で僕の両親はスーパーで働いていて留守だからだ。いやあ、鬼の居ぬ間に洗濯って奴だ。思う存分、美奈代といちゃついちゃった挙句、やることはあれしかないからコンドーム付けて初体験しちゃったよ。彼女も初体験で処女だから痛がったけどね。それ以上書くとやらしいことを書かなきゃいけなくなるから書かないけどさ、この日以来、彼女が僕のことを益々好きになったようで、お目々を少女漫画のヒロインみたいにキラキラさせて見るようになったんだ。
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