27『黒電話のご利益』

1/1
前へ
/161ページ
次へ

27『黒電話のご利益』

やくもあやかし物語・27 『黒電話のご利益』        ここに在ったはずなんだけど……  もう二回目だ。  お爺ちゃんとお婆ちゃんといっしょに公衆電話を探している。  お爺ちゃんがSNSで黒電話で盛り上がって「それなら家にある!」と家探ししていたのをわたしが見つけてあげた。  そうすると「黒電話の掛け方」でオチョクラレて、そのノリのままに――やくもの公衆電話レッスン――というミッションが出来あがった。そして、ジジババの記憶の中の公衆電話を探して歩き出したんだけど、とうの昔に撤去されたらしくて見当たらない。 「駅前のスナックにピンク電話があった!」 「だめですよ、お酒飲むとこなんか」  お婆ちゃんのNGで、スナックをパスして駅の中へ進む。 「「「あった!」」」  売店の横っちょにヒッソリとあった。 「昔は、伝言板とかもあったなあ……」  お爺ちゃんがシミジミする。 「そうそう、あなたが初めて来た時に時間間違えて、伝言板に書きましたよね」 「そうだっけ?」 「え、なんて書いたの?」 「それがね『右に同じ 昭介』って」 「右って?」 「『大嫌い!』って書いてあった」 「なにそれ!? ヤバいよお爺ちゃん!」 「いや、俺が書いた時は『自分で探して行きます、昼までに見つからなかったらお電話します』ときれいに書いてあったんで、右に同じにしたんだ」 「もう、無精なんだから、あの時はほんとにビックリしたんですからね!」 「なんで、右のは書き換えられてたの?」 「ああ、一定の時間が来たら消されるんだよ、消された後に『大嫌い』と書いた人がいたんだ。でも、そのあと再会した婆さんは……」 「もう、その話は無しです。それよりもやっちゃんの実習!」  わたしは十円玉を投入して公衆電話の初体験!  ところが、投入した十円玉はコロコロと返却口に出てしまう。 「え? 故障?」  三度繰り返しても戻って来るのでアタフタ、しょうじきテンパる。 「先に受話器を取るんだよ」  最初に言って欲しい!  受話器を持って四回目に成功! ピポパと家の電話番号を押す。家には誰も居ないので、呼び出し音だけが続く。  五回呼び出し音を聞いて受話器を戻す。  ガチャリ コロコロ 「え、十円戻ってきた?」 「繋がらないと戻るのよ」 「そなの、なんか得した気分」 「じゃ、次はテレホンカード」  こんどは、ちゃんと受話器を持ってからカードを入れる。  考えてみるとさ、自販機とかって、まず最初にお金とかカードとか入れるじゃない。そういうのに馴染んでるから先に受話器を取るって、なんか違うのよ。  ピポパ プルルル プルルル  五回で切ろうと思ったら、ポシャ『はい もしもし小泉でございますが』。  ビックリした、電話にお母さんが出てきたのだ!  「あ、あ、あ、えと、えと……やくもだよ、お母さん」 ――なによ、玄関入ったら電話が鳴っててさ、慌てちゃったわよ! ちょっと前はとる前に切れちゃうし――  前のが自分だとは言えなかった。 「で、なに、スマホの故障?」 「ううん、ちょっとね、お爺ちゃんお婆ちゃんといっしょに公衆電話のレッスンしてて……」  そのあと、お婆ちゃんが変わってくれてキチンと説明。お母さんが大笑いしてるのが聞こえて恥ずかしくなる。  お爺ちゃんの発案で、お母さんも呼び出して食事をすることになった。  考えたら、一家四人の外食は初めてだ。  黒電話のご利益なのかもしれない(^▽^)/。 ☆ 主な登場人物 やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生 お母さん      やくもとは血の繋がりは無い お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介 お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き 小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている 霊田先生      図書部長の先生
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加