04『街灯』

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04『街灯』

やくも・04『街灯』    あのお厨子は一晩で無くなった。  本格的な解体工事が始まるようで、生け垣の一部が取り壊され怪獣みたいなショベルカーが入っていた。  お厨子は、ショベルカー入れるのに邪魔なんだろう、三本ほどあった庭木といっしょに無くなっていた。  当然五十メートルの崖道を迂回して学校に行く。  裏側に出た時には、もう、バリバリと音がして母屋が取り壊される音がした。  その音が恐ろしくて、視界の端に捉えることもしないで三丁目の学校に急いだ。  帰りは、また図書委員の仕事がまわってきて遅くなった。    黄昏時のあの道を歩く勇気が出なくって、十五分以上余計にかかる大回りの道を通って帰った。  途中、道幅の割には人通りのないところにに差し掛かる。  真っ直ぐな道の彼方には自分の家がある一丁目が小さく見える。でも、一丁目につくまでは薄暗い一本道、二車線あるから車も通るんだろうけど、この瞬間は車の陰どころか、音もしない。  街灯の間隔が長いのも不気味だよ。  おまけに、一つ向こうの街灯は切れかけていチカチカ……と思ったら、プツン、ほんとうに切れてしまった(;゚Д゚)。  ほんの五分ほどで一本道は突き抜けられる。  よし!  図書室に並んでいた本たちを思い出しながら行こう。  委員会で、図書室の見取り図をもらっていた。それを手に広げる……分野別の本棚や、本棚の中の推薦図書などが書き込まれている。  それを、きちんと読みながら白線で区分けされてるだけの歩道を歩く。  二百冊ちょっとのタイトルを読んだところで、一本道を通り終える。  やったー!  嬉しくなって、振り返る。  暗い一本道の先が闇に溶けている。こんな怖い道を通ったんだ、自分を褒めてやりたい気分になる。  あれ?  この暗い道……どうやって、見取り図を読んだんだろう?  ぜったい暗くて読めないよ。  でも、ずっと明るいまま見取り図を見ていたよ。  え? え?  街灯を見上げて、上から下に目線を移して……ビックリした!  街灯の下半分は道路に接していない……下からは四本の脚が出ていて、がに股になっていて、後ずさりするわたしに合わせてヨチヨチと歩いてくるではないか! 「あ、ありがとう。も、もう、いいからね」  そう言うと、街灯は残念そうにため息ついて立ち止まった。  そこからは走った!  お風呂掃除が間に合わなくなるし!
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