21人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
閉会式が終わると、近所の神社には仲良くお参りする三人の家族の姿があった。手を合わせ今日の御礼をすると、帰り道を手を繋いで歩いた。
楽しかった運動会。和夫にとっても、広志にとっても良い一日となった。二人で、生まれて初めてゴールテープを切った。
「ところで晶子。何でだと思う?」
「何が?」
「いや、何で足が速い子ってモテるんだろうな」
和夫は拍手喝采を浴びても辿り着けなかった答えを探していた。
すかさず広志が口を挟む。
「それは、カッコいいからだよ!」
「だよな、今日のお父さんと広志、頑張ったよな」
広志が元気良く「うん!」と言うと、和夫は今日の走りに満足したのか、嬉しそうに微笑んだ。
広志の恋がこの先どうなるかは分からない。足が速いとモテるなんて、子どものうちだけだ。
しかし、頑張って必死になる姿は、子どもだろうが、大人だろうが、いつだって──。
晶子は眉間に皺を寄せ、頬を膨らませると、今日の和夫の勇姿を思い出して言った。
「そうね、カッコいいかもね!」
「よーし! 走って帰るぞ!」
二足の眩しい靴が、仲良く町内を駆け抜けた。
〈終〉
最初のコメントを投稿しよう!