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お前たち人間を絶滅させるくらいなら、俺がやめたほうがいい。
格好つけているわけじゃなく、本気でそう思ってる。
人間の中にも、“芸術家”と呼ばれている存在がいるだろう? そいつらに近い感覚かもしれないな。俺は地球の神様に配属されてから何も成し遂げられなかった。ミスをして上司には怒られてばかりだ。
でも、俺は人間を作り出した。
俺の最後にして最高の芸術である人間を作った。
お前たち人間は俺の芸術であり、子供であり、分身だ。
お前たちだけが俺の全てなんだ。
正直に言うと、神様の世界では“人間は失敗作”だと言われている。だけど、俺はそうは思わない。
お前たちは俺が作り出した一番の傑作だ。誰がなんと言おうと素晴らしい存在だ。
俺が辞める前に、伝えたいことがあるんだ。
説教くさいことは言わない。お前たちもガミガミと言われるのは好きじゃないはずだ。
それに、神様だからといって全てをコントロールできるわけでない。神様にできることは、0から何かを生み出すことと、物体の動きを変えることだけだ。思考を操作することはできない。俺がいくら口うるさくお前たちに説教をしても、お前たち自身が変化しようと思わなければ何も変わることはない。
俺が伝えたいのは、すごくシンプルなことだ。
「人間よ、愛を忘れるな」
これに尽きる。おい笑うなよ、人間。神様が真剣に話している時は、しっかり聞くものだ。
愛することこそが、人間の最大の強みだ。俺が偶然にも人間に与えた最強の武器だ。
恋人を愛するんだ。
家族を愛するんだ。
友達を愛するんだ。
隣に座った人を愛するんだ。
すれ違った人を愛するんだ。
怒っている人を愛するんだ。
泣いている人を愛するんだ。
嫌いな人を愛するんだ。
植物を愛するんだ。
動物を愛するんだ。
昆虫を愛するんだ。
風を愛するんだ。
雨を愛するんだ。
季節を愛するんだ。
太陽を愛するんだ。
故郷である地球を愛するんだ。
共存するんだ。お前たちは共にやっていける。人間が愛を与えてやるんだ。
お前たちが周りの全てを愛で包み込む。そうすればきっとうまくいく。
俺はそう信じてる。
だって、お前たちは俺が作ったんだから。
そろそろ時間みたいだ。
これから俺の退任式を開いてくれるらしい。まったく神様のくせに堅苦しいよな。ちょっくら行ってくるわ。
ああそうだ。次に来た神様のことも愛してやれよ。あまり、無茶なお願い事はするんじゃないぞ。俺と違って他の神様たちは(神様のくせに)短気な奴らが多いからな。
最初の赴任先が地球で良かったよ。
良い星だった。お前たちも大切にしろよ。
じゃあな。また会おうな。俺の愛する人間たちよ。
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