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「ご本で読んだことがあるわ。見るのは初めて……。」
メルーシナの生まれ育った所では、雪は降らないのだろうか。雪を見慣れたシウリンは、そんな風に思う。
粉雪がちらつく中、シウリンは立ち止まる。冬枯れの森の中で、ぽつんと常緑樹の大木があって、緑の葉が雪から守る木陰を作っている。
「少し、休憩しましょうか」
森を抜ければ、尼僧院まではあと少しだ。シウリン自身が休みたいというのもあったが、メルーシナに水分の補給をさせる必要があった。
シウリンはメルーシナを背中から降ろすと、下草が湿っていないことを確認してから、木の根元に腰を下ろした。メルーシナもその隣にチョコンと座った。
肩から腰に下げたずた袋から、残りの焼き菓子と、果汁水を取り出す。
「もう少しですから、頑張ってくださいね」
実際に歩いているのはシウリンだけだが、シウリンの言葉にメルーシナがこくんと頷く。果汁水を瓶から直接口をつけてラッパ飲みし、瓶をメルーシナに手渡す。彼女の手には大きく重い瓶を支え、飲むのを手伝ってやる。残りの焼き菓子を彼女に食べさせ、シウリンはほっと息をついた。
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