0-3 約束の指輪

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 みなしごのシウリンは、なぜ、自分が〈王気〉を持つのかは、知らない。シウリン自身には視えないその〈王気〉故に、彼は聖地の僧院に献身され、生涯を〈純陽〉として送るよう、定められた。その血を誰にも伝えることなく、人生を終えねばならないのだ。 「その〈王気〉があるから、僕は、誰とも結婚してはいけないのです」 「どうして?」 「天と、陰陽が、そう望んだのですよ」  聖地ではよく使われる言い回し。シウリンは、その言葉で、全てを諦めることを余儀なくされてきた。これまでは、何も望むことはなかったけれど――。  メルーシナが少し考えるようにして、言った。 「じゃあ、もし〈テン〉と〈インヨウ〉がそう望んだら、わたしの旦那様になってくれる?」  シウリンはなぜか、目の奥が熱くなって泣きたい気分になる。今すぐにでも、うんと力強く頷いて少女に誓いたい。天と陰陽が望まなくても、シウリン自身がそれを望んでいるのだから。相変わらず、体中にめぐる少女の甘い〈気〉に酔いながら、シウリンはそれでも尋ねる。 「どうして、僕なのです?……〈王気〉があるから?」
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