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「僕も……あなたがいい。他の人は、いらない。……天と陰陽がそう望めば……」
「約束して。わたしと〈ケッコン〉するって」
「もし、天と陰陽が望めば、あなたと結婚します。……あなた以外とは、結婚しません」
はっきりと誓ったシウリンに、少女が明るい声でいった。
「本当?じゃ、約束ね。わたし〈テン〉と〈インヨウ〉にお願いするわ。……だから、約束の印にキスしてもいいわよ」
「キス?」
キスってなんだ? 僧院育ちのシウリンは、見たことも聞いたこともない。
「シウリンは大きいのに、キスも知らないの?……ほら、こうするのよ」
メルーシナは腰を浮かしてシウリンの前に立つと、シウリンの剃髪した額にチュッと口づけした。
瞬間、雷に打たれたような衝撃がシウリンの全身を駆け抜ける。メルーシナの唇から額に流れ込む〈気〉が、シウリンの脳天を直撃した。しばらく身動きもとれず、目を瞠って茫然としていると、メルーシナがシウリンに催促した。
「……ほら、シウリンも早く」
メルーシナがシウリンの真ん前で目を閉じて待っている。流されるままに、震える唇でメルーシナの白い額に触れる。
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