350人が本棚に入れています
本棚に追加
熱い――。
唇から流れ込む彼女の〈気〉も熱いが、唇に触れる彼女の額がすごく熱い。
「メルーシナ……熱が上がっていますよ! 大変! 急いで尼僧院に向かいましょう」
今まで、メルーシナの〈気〉の甘さに気を取られて気づかなかった。シウリンは自分の迂闊さに舌打ちする。
「ううん……大丈夫……シウリン、温かいから……」
先ほどよりも幾分ぐったりしたメルーシナを背中に負ぶって、シウリンは再び歩き出す。
「辛かったら眠ってもいいですよ。落としはしないから」
「うん……だいじょうぶ……」
程なくして、背中から寝息が聞こえてきた。シウリンはメルーシナを起こさないよう慎重に背負い直すと、歩く足を速めようとした。
その時、メルーシナの手の中から、何かがころりと落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!