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暗くなりつつある森の中で、わずかな光を反射してそれが煌めく。シウリンは慌てて転がった先を目で追い、足で踏んで確保する。メルーシナを背負ったまま、そうっとしゃがんで拾い上げると、それは大振りの、時代ものの指輪だった。涙型の宝石の周りに金銀の象嵌が施されている。シウリンには宝石の価値はわからないが、メルーシナがずっと握り締めていたのだ、大切なものであることは間違いない。
シウリンは失くさないように、首から下げている巾着型の小物入れに指輪をしまった。メルーシナには目が覚めてから渡せばよい。
しばらく歩き続けると、うつらうつらしていたメルーシナが一度目を覚まし、叫んだ。
「シウリン! 大変、お母様にもらった指輪、落としちゃった!」
メルーシナは半泣きだが、シウリンは優しく少女を宥めた。
「指輪でしたら、僕が拾って持っています。……ほら、ここに」
少女を背中に背負いながら、片手で巾着に入れていた指輪を取り出し、示してやると、少女はほっとしたように言った。
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