臓器移植の有無

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ずっと言いたかった言葉がある。 「·····移植したい·····」 一度、溢れ出た言葉も涙も止めどなく溢れ流れ続けた。 「·····幸せに·····なりたい」 移植の話を聞いた5年前の、あの日から胸に詰まって独りで抱え込み誰にも言えなかった言葉―――。 素直に慣れなかった·····強がっていたあの日の私。自分の弱さと情けなさに嫌気がさし本音を隠し続けた愚かな私――――。 本当は気付いてた·····口では綺麗事を並べても、私は誰よりも移植を望み、幸せな家庭を夢見てる。彼(旦那)との明るい未来に期待と憧れを抱いている。願っている。 でも移植に対する期待とは裏腹に恐怖が付きまとい、拭いきれない不安に苛まれ、弱い自分が別人格の強がりな、もう一人の私を作り上げ高い高い壁となった。 「弱さを見せる事は恥ではないんだよ」 子供のように泣く私を彼(旦那)は優しく、抱き締めてくれた。その腕の力は強く彼(旦那)が歩んできた日々の重さを物語っていた。 彼の愛は、とてもとても重くて、そしてズッシリと私の胸に響いた。 きっと彼(旦那)も私以上に悩み葛藤していたのだろう。優しさから多くを語らず懸命に支え続ける覚悟を彼(旦那)は身をもって実行し、こんな私を支え続けていてくれたのだ。 彼(旦那)声音は、どこまでも優しく温かく、そして。とても強く私を癒す。 誰よりも近くで 誰よりも優しく 誰よりも信頼できる人。 どんなに醜かろうと、哀れであろうと彼(旦那)は常に私に寄り添い、けして多くは語らなくても傍で支え常に笑顔で居てくれた。 ずっと·····。何年も何年も、私を思い支えてくれていた。彼(旦那)の愛の深さに、大きさに目を背け、私は独り可哀想な自分を演じていたんだ。
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