はじめの一歩

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はじめの一歩

夫婦の絆の深さを再確認してから数ヵ月。私と彼(旦那)は移植外来に来ている。 移植の為の検査と意思の最終確認の為だと言われてコーディネーターさんと話す席が設けられたのだ。 ずっと移植を受けるべきか悩んでいた。医者もコーディネーターさんも、もちろん、そのことは知っている。 「情緒不安定な気持ちのまま、整理もつかない状態で移植を受けさせる訳にいきません」と、ハッキリ言われていた。 前回の医者とコーディネーターさんとの話し合いで私の気持ちに、ゆとりができ、しっかりと自己判断ができるようになるまで移植の受け入れ自体を保留にして、もらっていたのだ。 「移植を受けさせて下さい」 私はお医者様とコーディネーターさんを真っ直ぐ見つめ、迷うことなく率直に今の気持ちを伝えた。 「沢山、迷い考えました。悩んだからこそ今の私が言える事は、移植を受けお世話になった沢山の人達に恩返しがしたい。只それだけです。迷いはありました。今でも心のどこかで亡くなられた方から臓器提供を受ける事が申し訳ないと思ってしまうのも本当の私の気持ちです。それに大きな手術ですし正直、本音は怖いです。でも、それでも彼(旦那)の為に移植して、二人で幸せになる為に闘いたいと心の底から思えたんです」 嘘偽りのない今の私の気持ち。 お医者様とコーディネーターさん共に私達を力強い眼差しで見つめ、にこりと微笑んだ。 「よく決断されましたね。移植は御夫婦お二人の問題です。どんなに我々が口を挟もうと御決断されるのは御本人と御家族です。移植に関して言うなら無理強いはしない。それでもお二人が決めた勇気ある決断は大変、喜ばしく医者、看護師、コーディネーター皆共々、全力を尽くしサポートしていきたいと思います」 コーディネーターさんが私を抱き締めてくれた。 「きっとこれからが大変よ!でも頑張って乗り越えて行きましょうね」 私は隣で微笑む彼(旦那)の手を握った。 「はい!これから宜しくお願いします」 病院を後にした私達の心は晴天の青空のように晴れ晴れとしていて、とても気持ちが良かった。 こうして私は弱かった自分と決別し彼(旦那)との深い絆を再確認して新たな一歩を踏み出した。 これから長く険しい道が私達の行く手を阻むかもしれない。 それでも、きっと大丈夫! 私達夫婦なら、きっとどんな困難も試練も乗り越えて行けるから。 【ありがとう】 【ごめんなさい】 【愛してる】 私からあなたへ贈る3つの魔法の言葉を胸に、私は明日を信じて闘い続ける。 ―END―
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