5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
面接官は何人いますか?
まだ誰も来ていない朝のオフィス。ブラインドを上げた窓からの光が足下に影を作る。実物より長く伸びた体に私の口からは気分よく鼻歌がこぼれた。水を入れたばかりのポットのスイッチを入れ、お湯が沸く間にパソコンを起動させる。ウィン、という起動音が静かな室内に響く。
ざわめきに染まる前の澄んだ空気を吸い込んで、要求されたパスワードを打ち込む。
業務に必要なソフトを立ち上げる間にコーヒーを淹れに再び給湯室へ。
少し苦みの強い香りを嗅ぎながら机に戻れば、「いつでも始められますよ」とばかりにパソコンが準備完了の顔をして待っていた。
「とりあえずメールかな」
カチカチっとマウスを動かせば未開封のマークがずらりと画面に並ぶ。昨日は定時退社したので、いつもより溜まっているはずだ。すばやく中身を確認してフォルダに仕分けていく。幸い急ぎのものはなさそうだった。
一通り既読に変えたところでコーヒーを一口飲み込み、ホッと息を吐き出す。
この時間が一番好きだな。
そんなことを思いながら再びパソコンの画面に視線を戻すと、ポコン、と新着を知らせるマークが現れた。
右下の時刻は午前七時を回ったばかり。
「……早いな」
自分のことを棚に上げてため息とともにつぶやく。
最初のコメントを投稿しよう!