第1章 いのりと全裸男

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 昨日まで行っていたのは投票式のイベントだ。アプリ内のミニゲームを進めるか課金するかして得られる投票券を好きなキャラクターに投票し、投票数が一定になるとそのキャラのシナリオが読めるという仕組みになっている。ユーザーが投票した数はもちろん運営の方で統計を取っているので、各キャラクターの人気が数字で見られるというわけだ。 「先週は龍(りゅう)が一位ですね。二位がカイト、三位がココ」 「三位……! やった……!」  いのりは思わず声を上げた。給料のうち自由に使えるお金のほとんどを投票券に替え、そのすべてを迷わずココにぶち込んだのだ。  今回の投票は、普段とは違う特別なものだった。上位三名のキャラには「プレミアムストーリー」と名付けた短いシナリオを制作することが確約されているのだ。それも、ただのシナリオではない。キャラクターのセリフは人気声優によるボイスつきで、シナリオのラストシーンには「スチル」と呼ばれる美麗イラストが挿入されるという気合いの入れようだ。こんなことをされると知ってしまったら、ココを推しているいのりとしては何を差し置いても投票せずにいられない。
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