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それまで事務の仕事しかしたことのなかったど素人のいのりに、シナリオ技法から社内チャットの使い方まで、丁寧に教え込んでくれたのは榛名だ。仕事の処理能力は抜群なうえ、書くシナリオもクオリティが高くユーザーに好評。おまけに美人ときている。いのりにとって、榛名は女性としてもシナリオライターとしても憧れの存在だ。無理だと思いつつ、少しでも榛名に追いつきたい思いでこうして早く出勤したり、まめに資料をまとめたりしている。
「今日も頑張ろうね。わからないことがあったら、いつでも聞いて」
「はい……! ありがとうございます!」
榛名の美しい笑顔にまた活力が湧いてくる。いのりは中途半端に伸びたショートカットの髪をヘアピンでとめると、さっそく支給されている自分のPCを開いた。
シナリオライターの仕事の流れはその会社によってさまざまだが、いのりの場合は朝出勤したらまずメールや社内チャットの確認をして、自分宛てのものがあれば返信することからはじめる。社内全体の朝会のあとは自分の作業をはじめるのが通常だが、この日は午前中から「7セレ」の企画メンバー全員で行う定例ミーティングがあった。
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