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一
キラキラ輝くイルミネーションが連なる道。みんな写真を撮ったり家族でゆっくり歩いてる。
その横を僕は、小走りで通り過ぎていく。
着込んだ上着を擦らせて、ニット帽の真ん丸の飾りを揺らして。解けないように結んだマフラーの端が風になびく。ポコポコともこもこの、ちょっとだけ大きいブーツが音を立てていた。
でも、誰も気づかない。みんなクリスマスの特別な夜に夢中だから。
――だから、嫌いだなんだ。
キラキラも、夜も、クリスマスも嫌いだ。誰も僕なんて見てくれないんだもの。一人ぼっちになるこの日は、大嫌いだ。
ぐすっとにじんだ鼻水を擦って、薄暗くて見えづらい前を見据えて足を動かす。ひたすら、歩いて歩いて歩いた。
そしてたどり着いたのは、大きな広場に飾られている、巨大なツリーの下だった。
そこは普段、子供が走り回れるくらいの大きな広場だが、今日はその中心に大きな大きなツリーが飾られていた。
大きすぎて見上げていると、首が痛むくらい。それくらい大きかった。
その分、使われている飾りも、てっぺんに輝く星も、一段と大きいものだった。
僕は思わず「こんなの、無駄だ」と呟いた。もちろんそんな声を聞く人などいなかった。……いないはずだった。
「――ねえ君、クリスマスが嫌いなの?」
突然聞こえた声に、ハッとする。パッと振り返れば、そこには。
「……誰?」
僕と同じくらいか、もう少し幼いような、白い女の子が立っていた。
髪は黒くて長くてきれい。だけど、つけている耳当ても、着込んでる上着も、首に巻いたマフラーも、靴もスカートも手袋も。全部全部全部真っ白一色だったのだ。
その子は僕の質問なんて聞こえてなかったみたいに、繰り返す。
「クリスマス、嫌い?」
これにもまた、うんざりしたんだ。だから僕はこっくりと頷いた。
「嫌いだよ。こんなキラキラしたものも全部、嫌いだ」
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