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 女の子は笑った。 「正直ものだねえ、君」  ばかにしたようなもの言いに、ぐっと握り拳を作る。 「なんだよ、悪いかよ!」  叫ぶが、辺りの喧騒にすぐかき消されてしまった。女の子は変わらず笑っていたが、ふと、まっすぐにこちらを見た。  そのまっすぐすぎる目に、ひゅうっと空気が抜けていく。 「私もね、嫌いなんだよ。クリスマス」  やけにはっきりと聞こえた告白。ぽかん、と女の子を見ていたら、また笑われた。 「私、マシロ。よろしくね」  そっと差し出された手。渋々掴むと、ひんやりとしていた。手袋をしていたわりに、氷みたいだ。 「……僕は、ダン」  女の子――マシロは、優しく笑って「ビャクダンのダン、かな?」と聞いてきた。 「びゃく……?」 「白檀。植物の名前なんだけどね」  別に忘れていいよ、と付け加えてまた笑った。僕は首を傾げたけど、でも忘れないようにしよう、と思った。  ひゅうっと風が通り過ぎて、僕とマシロの前髪を揺らしていく。 「ところで、君一人なの?」  その質問に僕はぐっと唇を噛んで、俯く。でも、言った。 「……家族から、逃げてきたんだ」
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