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「あなたは、今日のサプライズでしょう? なんて素敵な方!」
「祐奈の彼氏なの? こっちの婚約者と交換して!」
女性陣が盛り上がる側で、立っていた男性がムッとした顔をしている。
そこへお手伝いさんが「奥様方、せっかくのお料理が冷めてしまいます。お席におつき下さいませ。まもなく旦那様も見えますので」と声をかけ声を潜め良夫に「祐奈お嬢様のお連れさま、こちらへ」と助け舟を出してくれた。
「ちょっと失礼」
「戻ってらしてねー!」
黄色い声を背中に受け、良夫は再び営業スマイルを残しテラスを後にした。
「ふう、なんなんだ、これは?」
思わず出た言葉に、
「祐奈お嬢様は、奥様の本当の子供ではないのです。旦那様が他所で産ませた子供。旦那様は本当に罪なお方……」
お手伝いさんが良夫をじっと見ると、
「祐奈お嬢様はとても不憫でね。杏奈お嬢様もあの通りだから、この家も先が心配なんですよ」
「そんな内情だったんですか」
「あら、祐奈お嬢様から何にも聞いていらっしゃらないの? 祐奈お嬢様は、そう、話さないかもしれないわ」
こちらが何も言わないうち、お手伝いさんが勝手に納得する。
「それじゃ。失礼します」
「祐奈お嬢様を宜しくお願いします」
良夫は再び、営業スマイルを浮かべこの家を後にした。
「任務完了って、これで良かったのか?」
祐奈はいったいどこへ行ったんだろう。
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