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「第一、あの子の名前、祐奈なんてうちにぴったりの名前じゃない?」
「名前?」
「そうよ。うちに入ったら最強だから」
「ミナイユウナ……?」
「見ない祐奈なんて、うちのような秘密主義の仕事に最適よ」
「ーーえ?!」
「あれ? 良夫知らない? 父さんがこの仕事を始めた理由」
「聞いたことないし、第一、絶縁されてからずっと会ってないの姉さん知ってるだろ?」
「あら、そうだったかしら?」
幸代も一緒に、ウイスキーを飲んでいる。だいぶ酔ってきたのか? いつもより口が軽い気がする。難しい仕事を終えた後のような。一緒にやって来た良夫だから、わかる幸代の微妙な変化だ。
「父さんが昔、祐奈のおじいちゃんの運転手をやってた頃、お前の苗字最高だなって言われたんですって。ヤバそうな取引も南井からって」
良夫は首を傾げた。
なんだよ、祐奈のおじいさんって誰だ?
祐奈、そんな前から、うちの知り合いなのか?
「それで、おじいさんが亡くなった後、父さん運転手辞めて、それまで培ったノウハウを活かすために『何でも屋ミナイ』を始めたらしいわ」
おいおい嘘だろう……?
父さんのノウハウってなんだよ?!
それって、まさか、俺の人生の悲劇にまで関わっているっていうのか?
そんな……祐奈のおじいさん、いったい何者なんだよ?
良夫の頭は疑問だらけで、ぐるぐる回るようだ。
「良夫、世の中には知らなくていいことも、たくさんあるからね」
そう言うと幸代はウインクして、フラつきながらリビングから出て行った。
END
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