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「良夫兄さんの女装、さすが完璧!」
従業員の真琴(親戚の女子)が感嘆のため息を漏らす。
「何でも屋」事務所で、来客用のソファーに座り、良夫と真琴はテレビを見ていた。幸代も見ていたのだが、電話が鳴るので対応するために電話の前に座っている。
プルルン……と事務所の電話が鳴る。「はい、何でも屋のミナイです」幸代が応対する。先程から、ポツポツ仕事の依頼の電話が入っている。
朝放送の情報番組で、先日のインタビューが取り上げられオンエアされた。
あの後、別れ際に幸代が、すかさず名刺を渡した所、上層部が興味をもったのか、後日取材に来てくれた。その時の話等も簡潔に纏められていた。
あの日、良夫は幸代に頼まれ女装していた。良子とは良夫が扮する女性の名前だ。依頼があると何でもするのが「何でも屋」の仕事である。
今日の良夫は、次の仕事がある為髭をたくわえビシッとしたスーツ姿。だが、小指を器用に立ておどけながら「もっと褒めてちょうだい」と、わざとらしくしなを作る。
「良夫兄さん、今のはオカマよ!」
真琴がひきつった作り笑いを浮かべる。
「もぉ、真琴のいけず-」
二人が顔を見合わせ、幸代の通話の邪魔にならないように、声を殺して爆笑した。
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